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(18) チャンスをつかむ企業の特徴

成長する企業とそうでない企業は何が違うのでしょうか。成長を続ける企業は新しい顧客セグメントと商品、つまり新しいマーケットを作り出しているように見えます。特に起業家は大企業の後追いをしていては絶対に勝てないので、大企業が相手にしていないところに成長機会(チャンス)を見出しています。いくつか例をあげてみましょう。

Starbucks コーヒー店というありきたりな業種でも、特別感のある飲み物をシックなインテリアと親密な接客で提供することで、職場でも家庭でもない「サードプレース」で憩うというニーズとそれを求める高価格帯の顧客セグメントを作りだした。

Red Bull もともとはタイの労働者向けだった栄養飲料に新しい可能性を見出し、ブランディングに大きな投資をすることで興奮を求める欧米の若者をターゲットとした「エナジードリンク」というカテゴリーを作り出した。

Tiktok すでに大企業の寡占状態にあったSNS業界に、ショートビデオと卓抜なアルゴリズムで莫大なプロシューマー(生産消費者)とそれに付随したマーケットを作り出した。

老舗企業が新たな成長機会をつかんだ例もあります。例えば米コーニング社の高硬度ガラスの基礎技術は1960年代に開発されて以来、ほとんどビジネスには貢献していませんでした。それがブレークスルーしたのが2007年のiPhoneへ供給です。アップルCEOのスティーブ・ジョブズは発表当初の初代iPhoneのプラスティックカバーに不満を持ち、発売までの6か月でガラス部材への変更を命じました。コーニングCEOのウィークスはこの機会を逃さず量産のための巨額の投資を決断しました。さらに「ゴリラグラス」という新たなブランド名を作り、今ではコーニングを代表する製品になっています。

成功要因は企業ごとに異なりますが、共通して言えるのは、経営者のビジョンとフォーカス、さらに長期間にわたる取り組みです。トップが本心から取り組まないと新事業の成功は難しいようです。

上記のような華々しい成功は簡単に起こることはないでしょうが、どんな企業でも新事業を作りだす努力を継続して行うことが必要でしょう。既存ビジネスにおいても代替品が出てきたり、優良顧客が取引を停止してくるリスクがあるからです。成功している企業は平均で投資の20%程度を新事業にあてているという調査結果もあるようです。さらに投資予算だけではなく、成功率を高めるための組織体制や仮説検証プロセスの整備なども必要でしょう。

北米にある日本企業の幹部には既存事業の運営と同時に新しいグローバルビジネスの種を探すミッションを持っている方も多いと思います。自社の周りにあるチャンスを逃さないためにどのような工夫ができるか、社内ノウハウを再評価して考えてみてはいかがでしょうか。