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VUCA時代の企業経営

(1) はじめに

数年前から VUCA という言葉を目にするようになりました。これは Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguityの頭文字を取ったもので、目まぐるしく変化し、ますます先行きが不透明になる現代社会の特徴を指しています。今回のコロナパンデミックで VUCA を身近に感じた人も多かったのではないでしょうか。

変化のスピード自体も加速しています。特に情報技術の進歩は指数関数的で、直線的な考え方に慣れている私たちの自然な直感に反していると言われます。ビジネスの世界でもオープン開発、デザイン思考、アジャイルなど、新しい考え方や手法が続々と出ています。

環境の変化はリスクと同時に成長の機会をもたらします。しかしそれは全てのビジネスに平等ではないように思えます。一概には言えませんが、成功した会社や安定した会社よりも、経営資源に乏しい新興企業や成長志向の会社の方が新しいアイデアを生み出しやすいようです。その理由としては資源の絶対量よりは集中度さらには経営者の本気度の違いが背景にあるのかも知れません。

新興企業も規模を拡大する過程で安定した組織や業務プロセスを求めるようになります。しかし、それが次のイノベーションを阻害する可能性があるのではないでしょうか。言わばビジネスにおける「勝利の方程式」は作られた瞬間から諸刃の剣になるというパラドックスを抱えているようです。

これは多くの企業に共通する課題だと思います。成長を続ける企業はこのパラドックスを解消するのではなく、ビジネスの創造と破壊のサイクルをうまく利用することを目指しているようです。またそれは DX(デジタルトランスフォーメーション)が本来目指している「継続的な自己変革」の目指すところと重なると思います。

そのために次の 2 つの考え方をお勧めしたいと思います。1 つ目は、日頃からフレーム(枠)を使って考えるということ、2 つ目は多元的な世界観を持つことです。

フレームは情報整理のツールです。今まで習慣的にやっていた活動をあるフレームに載せることで客観的に見直すことができ、学びが起きます。われわれのようなコンサルタントにとってフレームは欠かすことができません。特2に新たなフレームを作る必要はないと思います。よく使われる SWOT 分析、事業ポートフォリオ分析、パレート分析、限界利益、KSF/KPI 設定などもフレームの一種です。

多元的な世界観とは、複数の視点を使いこなすことです。それによって企業の耐久力(レジリエンス)を強めることを狙います。これには、1)いろいろな対立軸を同時に考慮することと、2)軸において一極に傾かず状況に適合したバランスを取ることが含まれます。例えば、グローバル vs ローカル、内製 vs 外製、ハード vsソフト、既存 vs 新規、プロダクト vs サービス、のような複数の軸を設定し、一方に決め打ちするのではなく、環境に応じて自社にとっての最適なバランスを絶えず見直すことを意味します。

この 2 つの考え方自体は新しいものではありませんが、VUCA 時代において生き残るためには有効なツールです。これらを意識することで、ややもすると BAU(Business as usual、慣習的、ルーティーン)になりがちな企業経営を意識的に変えることができるでしょう。

今までに各種のメガトレンドを紹介してきました。その中には今まで当然だと思っていた企業経営の前提の見直しを迫るものがあるかもしれません。次回以降、具体的な論点を取り上げて成長を続けるためのヒントを考えてみたいと思います。