USJP INSIGHTSは、DXとAI、メガトレンド、VUCA時代の企業経営など日系企業のマネジメント向けの参考情報をお届けするニュースレターです。
メガトレンドDXとAI脱炭素ビジネスVUCA時代の企業経営
USJP INSIGHTS
脱炭素ビジネス

(5) 世代交代と脱炭素

脱炭素を始めとする企業の環境対応については、規制対応などの理由でやらなければならない=企業にとっては追加のコスト、という見方があると思います。一方で持続可能性を差別化戦略として掲げる企業も近年増えています。ブランドイメージを大切にする消費財メーカーや優秀なエンジニアの採用が死活問題であるソフトウェア会社などにその傾向が顕著です。 

アメリカでは世代交代が起きています。戦後すぐに生まれたベビーブーマーたちがリタイアし、ジェネレーションX(今の40代前半から50代半ば)とミレニアルズ(20代半ばから40代前半)が消費の牽引車になり社会的にも指導的な立場に立ちつつあります。当然かも知れませんが、若い世代ほど環境問題に高い関心を示す傾向があります。2021年にアメリカ人を対象にした意識調査では、ミレニアルズの71%が、政府やビジネスは気候対策を最大の優先事にするべきと答えています。ジェネレーションXではその割合は63%、ベビーブーマーでは57%です。若者の間で、気候変動を作り出した産業やそれに対して有効な方策を取れない政府に対する不満が高まっています。 

若い世代のこうしたセンチメントは購買行動にも現れます。別の調査によれば消費者の2割程度が購入するブランドを選ぶ時に環境への対応を顧慮すると答え、半数以上が企業のCEOはもっと社会問題に取り組むべきだと考えているそうです。こうした傾向は今後増加すると考えられます。あと10年も立つとビジネス界の常識は大きく変わるのではないでしょうか。将来を見据えた企業戦略が必要です。 

若い世代にとって気候変動は最大級の関心事であるにも関わらず、個人でできることはリサイクル・リユースのような地道な努力がほとんどで、大きなインパクトを与えることができないと考えています。一方でCO2排出量の3分の2は何らかの形で消費財・サービスに関連しているという試算もあるそうです。ここにビジネスチャンスがあるのではないでしょうか。 

eコマースプラットフォーマーとして急成長しているShopifyというソフトウェア会社があります。中小企業のオンライン販売ではAmazonや楽天などのショッピングモールに出品することがよくありますが、Shopifyのクラウドサービスを使えば独自のドメインネームとコンテンツ配置が容易に行えます。Shopifyはユーザー企業の環境対応教育に力を入れています。彼らが推奨している脱炭素の取り組みとしては以下のようなものがあります。 

プロダクトおよびパッケージの脱炭素化

簡素化、軽量化、リサイクル素材利用、低炭素材料利用、パッケージ材の回収など

 

ペーパーレス

領収書や請求書やステートメントのデジタル化、カスタマーポータルの設置など。これらは業務プロセスの効率化にも貢献します。

 

カーボン・オフセット配送

チェックアウトの際に配送に伴うCO2排出量を顧客がワンクリックでオフセット(課金)できるオプションを提供

 

CO2回収費の徴収

これはユーザー企業がオーダー1件ごとに数十セントをShopifyに支払うものです。ShopifyはそれをまとめてCO2回収プロジェクト(森林経営など)に投資します。ユーザー企業は「Planetバッジ」をウェブサイトに表示することができます。

 

レンタルビジネス

特にアパレルなど。サブスクリプション型で好きな服を一定数手元において着ることができ、いつでも別なものと交換できる。

 

中古品の買い取り・再販

中古品の買い取りを行う。また中古品中心にサブマーケットを立ち上げる

 

これらは消費者直販(Direct to Consumer)ビジネス向けのアイデアですが、B2Bであってもコンセプトは応用できるものがあると思います。社会の世代交代が進むと、こうした考えがごく当たり前のものになり、大企業でも自然に受け入れられていくのではないでしょうか。従来のISO14001やEnergy Starなどのオフィシャルな認証は残るでしょうが、既成のやり方にとらわれず、若い世代の価値観に寄り添った持続可能性のストーリーを発信できる企業が生き残っていくと思われます。