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(25) 米中対立とサプライチェーンの再構築

近年、米中の政治的対立が激化しています。実際に米国はハイテク機器の対中輸出制限や中国製品への関税など具体的な制裁措置を取っています。米国政府にとって中国は自らの超大国の地位を脅かす最大の脅威かも知れませんし、中国にとって米国は自国のさらなる発展に干渉する障害物に見えるのかも知れません。 

もちろん両国はお互いに莫大な貿易関係で結ばれており、政治的なあつれきとは別に経済的なリンクは簡単には切れないでしょうし、切れることを望む人は産業界には少数だと思います。 

一方でコロナ禍を通じ、サプライチェーンを一つの国に全面的に依存することの脆弱性は誰の目にも明らかになりました。中国で生産していたマスクや医療用具が世界的に品不足になったり、海上輸送に欠かせないコンテナーが不足し物流コスト高をもたらしました。中国以外に製造拠点を移管したり、中国プラスアルファの複数拠点を持つことを計画している日系企業も多いようです。日本政府はそうした動きに補助金を出しています。 

米国政府も製造拠点のオンショア・ニアショアを奨励しています。シーメンス・トヨタ・LGなどの外国企業も政府プログラムを利用した米国内の新工場建設計画を表明しています。 

こうした動きはグローバリゼーションに対してリージョナリゼーション(地域化)と呼ばれます。全世界をフラットに考えるグローバリゼーションは、長くて切れやすい糸のようなサプライチェーンを作りました。それは規模の経済を利用することでコスト低減には寄与しましたが、脆弱性は高くなりました。一方でリージョナリゼーションはサプライチェーンが各地域内で完結するため市場への応答性と強靭性に優れます。もちろんこの2つの戦略はどちらか一方を採用するものではなく使い分けるべきものです。 

これは日系企業にとってはチャンスと考えられます。日系企業はアジアと北米の2つのリージョンに参加しながら、その2つをつないだリージョン間サプライチェーンの刷新を狙うことができるでしょう。もちろんこうしたチャンスは日系企業だけではなく、韓国企業(サムスン、LG)や台湾企業(TSMC、フォックスコン)も狙っています。具体的には国内と、ベトナム・インドなどのアジア拠点、北米(アリゾナやテキサスなど)の3極新たな投資をしています。日系企業がこれらの先進的な企業から学べることもあると思います。