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(9) 企業からの情報発信の重要性

 インターネットの普及で、情報はほぼ無料で入手できるようになりました。 Covid-19に関しても最新の情報はtwitterで手に入り、そこからリンクをたどれば学術論文も読めるようになっています。 また高名な学者であっても間違った発言をすればすぐに指摘されます。 専門知から集合知へのシフトが起きています。 テクノロジーの世界でも、参加者を限定しないオープンソースによる開発はベストプラクティスになりました。 

 情報の普及は、いいことばかりではありません。 伝統的な権威や階層が意味を持たなくなると、却って不安が増す場合があります。 一つ例を挙げると、今回のパンデミックでマスクの必要性が話題になりました。 最初はマスクは意味がないと言っていたWHOや政府関係者が、次第にマスク着用を推奨するようになりました。 これも昔であれば、学説が変化しただけで、それほど問題にはならなかったと思います。 それが専門家を交えた議論がリアルタイムで拡散することで、科学不信から陰謀論までに発展し、不要な混乱を招いた感があります。 

 すでに消費者の世界では、影響力は中央集権的なテレビから、著名人インフルエンサー、そして身近なマイクロインフルエンサーへとシフトしてきました。 この傾向はデジタルネイティブと呼ばれる若い世代において顕著です。 この世代は発信者との親密な関係構築を求めます。 ビジネスの世界でも、伝統的な権威が失墜し人々がより身近な情報をもとに判断するようになっています。 例えば製品情報に関して、メーカーの公式マニュアルに加えて、ユーザーコミュニティが重要な情報収集の場になっています。 

 そういった環境で重要になってくるのは、情報発信者の信頼性と透明性です。信頼性というのはダブルスタンダードを持たないこと。 透明性というのは、何か問題が起こったときにその対応の経緯が公開されること。 例えば、環境保護を訴える企業が、途上国で未成年労働者を不当に雇用していれば、その情報はすぐに広まり、その企業は社会的制裁を受けます。逆にそうした問題への解決策が打ち出されれば、企業の評価は高まります。企業からの発信が企業価値向上に貢献できているか、定期的な見直しが必要ではないでしょうか。