(24) 週4日制は主流になるか
週に4日間勤務する勤務形態が世界中で注目を浴びています。日本でも国家公務員の働き方を決める人事院が週4日制を提言して話題になりましたが、すでにイギリスやオーストラリアではその動きが本格化しています。アメリカでもその前提となる週32時間制が政治家の間で検討されています。
このひとつのきっかけとなったのが、2015年から2019年に2500人を対象にアイスランドで行われた社会実験でした。これはホワイトカラーだけではなく社会のさまざまな労働者を対象にしたもので、ワーク・ライフバランスの改善が見られたと報告されています。参加者は、個人的な興味を追求したり、家族と過ごしたり、リフレッシュするための時間が増えたと報告し、幸福感が向上しストレスレベルが低下しました。さらに労働時間が短縮されても、職場での生産性が維持されるか、または増加したことが示されています。
週4日制にはいくつかのオプションがあります。労働法上週40時間勤務を標準とするアメリカ企業の場合、1)10時間勤務x4日間で給与は同じ、2)8時間勤務x4日で給与減、3)8時間勤務x4日で給与は維持などのパターンが考えられます。どれが適切かは業務内容や競争環境に依存し、一概には言えません。
働く側からすれば短い勤務時間で同じ給与が貰えるのが理想的です。企業から見れば、生産性が維持できかつ高品質なアウトプットが確保されれば、個人の勤務時間にこだわりはないはずです。
週4日制で労働者の生産性が維持または向上する理由としては次のようなものが考えられます。無駄な作業の排除、高い集中力、自己の裁量が増えることによる仕事の満足度向上、会社への帰属意識向上など。こうした社員の心理的満足感の増加が生産性向上につながるというのは経営者が意外と見落としがちな点かも知れません。
もちろん注意すべき点もあります。個人によってはよりスピードアップした労働環境や増えた自己裁量をストレスに感じることもあるでしょう。他人に比べて労働時間が短くなることで昇進の可能性が減るのではないかと心配する人も出てくるでしょう。また顧客対応など時間短縮ができない業務を分担するための調整が必要になってきます。
業種や職種によっては数年以内に週4日制が標準になるかもしれません。デジタル化による必要スキルの変化と一緒に検討を始めることをおすすめします。