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(23) 多様性をビジネスに活かすには

日本でも多様性(ダイバーシティ)の重要性が言われて久しいです。世界経済フォーラムが2022年7月に発表したジェンダーギャップ指数では、日本は146ヵ国116位となり、女性の社会参加率の改善が急務とされています。

広い意味での多様性には性別や人種のような個人の属性によるものに加え、学歴や職歴のような経験によるものや、パートタイムやリモート勤務など働き方の違いによるものなどがあります。多様な人材のポテンシャルを活かすことで経済価値を生み、社会貢献を果たすことは企業の責任の一つと言えるでしょう。

多様性は本当にビジネス上の競争優位に貢献するのでしょうか。すでに多くの研究があり、多様性と企業業績には相関関係があることが知られていますが、因果関係についてはまだ仮説どまりのようです。 しかしながら、多様性がビジネスに貢献する理由として以下のようなことが言われています。

■ 特定集団に付随するバイアスを排除し合理性を追求できる

■ 過去のしがらみに縛られないアイデアを創出できる

■ 今の組織構造が持つ権威にとらわれない意思決定ができる

■ 多様なマーケットニーズに対応できる

筆者は以前東京のコンサルティング会社で働いていたことがあります。そこで悩んだのは、日本語を母国語としないスタッフや育児中のスタッフの活用です。現場では高度な日本語力が要求されるプロジェクトや締め切りに追われているプロジェクトがほとんどで、せっかくの多様な人材を十分に活用することはできませんでした。

そうしたスタッフが活躍できたのは外資系の顧客でした。日本国内の外資系企業の多くは受注処理などの日常業務を日系パートナー会社に任せ、自分たちはマーケットクリエーションに集中しています。そのためか日本語・英語の流暢さや成果物の量や見た目よりも、データの分析、仮説作りと検証に価値を見出してくれました。

日本企業も以前は目に見えない多様性に富んでいたのではないでしょうか。企業の成長局面では多くの新人が入社したり新事業が開始されたりして、多様な知見が集まってきます。それが自然とイノベーションにつながっていたのかも知れません。成長率の低い業界や企業では、経営の意思として積極的に多様性を獲得することが必要かも知れません。

日本企業の米国現地法人でも多様性は有効だと思います。業務の効率化に加えて、米国顧客のニーズの変化をタイムリーに理解し継続的に製品やサービスを進化させるためには、今までとは別の人材を呼び込むことが必要かも知れません。

もちろん、多様な人材を呼び込むためには準備と時間が必要です。例えば以下のようなことを数年がかりで取り組むことになります。

■ あるべき組織の姿を描く

■ 多様な人材が共感できる企業理念を持つ

■ 多様な人材が働きやすい仕組みを作る

■ 採用計画を作り実践する

最後に、多様であってもメンバーが一つの共同体として協力しなければ組織の強みにはなりません。例えば多様な移民から構成されるアメリカ人を合衆国という共同体にまとめているのは合衆国憲法や忠誠の近い(Pledge of Allegiance)です。そこに定められているルールや理念に同意することはアメリカ市民の義務です。この共通認識が多様な人材が活躍できる基盤になっています。企業においても企業理念、行動規範などの形で憲法的なものを作り共有することが必要でしょう。日本本社発の企業理念だけでは不十分な場合もあります。米国子会社がパイロットケースとして多様性への取り組みを立ち上げ、本社を含む他国へと展開するようなアプローチも検討してみてはいかがでしょうか。