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(22) 2040年の世界シナリオ

2022年、コロナによるパンデミックにようやく収束が見え世界経済が再始動した矢先に、ロシアによるウクライナ侵攻が勃発しました。コロナも戦争もまったく予期しない出来事で、まさにVUCA世界を象徴しているかのように見えます。

しかしそれらは本当に予見できなかったのでしょうか。予見が無視されていたという見方もありそうです。例えばビル・ゲイツは2015年に、世界の人流の急増によって近い将来のグローバルなパンデミックの発生は避けられないと言ったそうです。人流・人口の増加、経済発展、気候変動などは大きなうねりになって将来の世界を形作るでしょう。正確な将来予想はできなくても、あり得る世界像をもとに自分たちの取るべき道を考えることは経営者の責任の一部ではないでしょうか。

2040年はそれほど遠い未来ではありません。今の20代前半の若手社員にとっては、幹部となり家族を養う時期です。その時にどのような世界があり得るのか。米国政府の調査機関であるNational Intelligence Councilが2021年に発表した未来予測をご紹介します。6つのシナリオが挙げられています。

 

1.米国主導によるリベラルデモクラシーの再興

米国と西側諸国はテクノロジーのブレークスルーによって国民所得を増加させ、政府・民間協力の促進と政府機関への信頼度を回復する。多くの国々も自由民主主義の陣営に参加する。ロシアと中国などの非リベラル国では、人材が西側に流出し経済は沈滞する。

2.リーダーなき世界

西側諸国は高齢化と政府債務増大のために、教育、インフラ、研究開発などの投資ができず、イノベーションは起きない。日本の「失われた数十年」と同じような経済的沈滞に陥る。中国はアジアにおける覇権国になるが、かつての米国のように世界を指導する立場にはならない。各国内部で両極化が進み、政治が混迷する。

3.米中冷戦

二大勢力となった米中は相互に政治的に対立しつつ経済的依存を深め、武力による衝突を避ける。それぞれの陣営では求心力が強まる。両国の指導者層は目先の競争に気を取られ、気候変動対策などは後回しになる。

4.サイロ化する世界

EU、ロシア、中国、米国、その他などの地域ブロックが形成され、グローバル経済は縮小する。インターネットも分断しイノベーションは起きにくくなる。グローバルな課題に対する対応はほとんど無くなる。ブロック間の対立が強まり核戦争の可能性は増大する。

5.世界的危機を経た秩序再生

2030年代初めに気候変動による世界的な食糧危機と難民が発生し、各国で暴動が起きる。それをきっかけに若者が国境を超えて連帯し、EUを中心にグリーン革命を起こす。そこに自国の飢饉と暴動に直面した中国共産党が賛同し、グローバル危機に対応する新たな国際秩序を形成する。オーストラリア、カナダ、米国もそこに加わる。

 

米国とその同盟国を中心に見れば、シナリオ1が最も好ましい世界像でしょう。しかしこの実現には西側諸国が今後も強いリーダーシップを維持することが不可欠です。維持できない場合はシナリオ2-4になる可能性が高まります。シナリオ5は結果的には理想的に見えますが、世界的危機がきっかけになっています。危機を切り抜けられない可能性もあります。