(18) ジョブ型雇用
会社は労働と賃金を交換するマーケットとしての役割だけではなく、社員同士の互助会的な側面を持っています。一人ではできないこともチームでやれば可能になりますし、新人が先輩社員から学んだり、個人が何らかの理由で働けなくなった時に、支え合うこともできます。こうした役割は日米でも変わりませんが、社員と会社のコミットメントの強さが違うことは、両方の国で働いたことのある人は実感されていると思います。
最近、日本の雇用はメンバーシップ型で、米国はジョブ型だ、日本もジョブ型にシフトしなければならない、という議論をよく目にします。その意味するところは、メンバーシップ型だと社員に対する期待値があいまいで長時間勤務を引き起こしやすい、また企業を横断したスキル基準がないため転職が難しく労働市場が硬直化している、国外から高度人材を呼び込めない、などのデメリットの解消をうたっているようです。リモートワークを効率的に進めるためにも職務内容の明確化は役立つでしょう。
もちろんジョブ型にもデメリットがあります。ジョブ型によって、社員が全社的な目標達成のために一丸となって努力すること、会社の状況を理解した上で柔軟にに行動することが難しくなること、などです。日本企業の得意技であるカイゼン活動もジョブ型組織に導入することは容易ではありません。シリコンバレーにはジョブ型組織の弊害を無くし、チームワークを強化するために、社員の職務定義や個人目標を廃止する企業もあるようです。
雇用慣習の違いは米国の日系企業で如実に現れます。米国人社員は日本人マネジメントに機能上の専門知識やリーダーシップを期待しますが、日本人が米国人社員に求めるのは、無理が効くといった柔軟性であったり、長期雇用の代わりの低賃金だったりします。しかし、ジョブ型が「世界標準」である以上、日系企業もグローバルなオペレーションを進めるためには、ジョブ型へのシフトを進めていく必要があります。中でも、海外と仕事をする本社事業部や、ITや経理部門のような専門職においては率先して変革を進めることが求められるのではないでしょうか。