(16) ベーシックインカム
ベーシックインカムは、国が社会保障の代わりとして国民に現金支給をする制度です。 米国では、民主党の大統領候補者だったアンドリュー・ヤンが成人一人あたり毎月1000ドルの支給を提唱して以来、多くの人に知られるようになりました。 Covid-19による大量失業はこのアイデアの現実化を後押ししています。
ベーシックインカム推進者は、ロボットやAIによる自動化で多くの人々が職を失う一方で、富裕層の富が飛躍的に増大し、その富を使えば、全員に高額な支給が可能だと主張しています。 また各種の社会実験によれば、ベーシックインカムを受け取っても人々の労働意欲は減退せず、むしろ貧困に起因する多くの社会問題が解決するので政府支出が削減できる、と主張しています。
否定的な見方もあります。 ベーシックインカムによって絶対的貧困はなくなりますが、働くことを諦めた大多数の人々と、より高収入を目指す少数のエリート層に社会が二分化され、エリート層が社会と経済を支配するようになる、という未来社会です。 この前提にあるのは、働かない=社会参加に関心がなくなる、という仮説です。
ベーシックインカムが導入された場合、企業は低賃金労働者の雇用が困難になり、自動化への投資が必要になるでしょう。 またフルタイムで働く人が少なくなり、いろいろな雇用条件を持つ労働者を組み合わせて仕事を遂行する工夫が必要になると思われます。 さらに賃金以外のモチベーションを与えることが重要になります。 それは組織への帰属意識であったり社会的使命であったりするかも知れません。 またベーシックインカムが導入されなくても、GenZ世代は賃金以外のモチベーションを重視する傾向があるようです。 こうした動きについては今からでも準備することが必要ではないでしょうか。