(15) リモートワークとオフィス
7月に知り合いのコンサルタントが4月に行ったリモートワーク(Work from Home= WFH)に関する社員の意識調査の結果をご紹介しましたが、彼女が3か月後に行ったアンケートにもとづく、新しい調査結果を公表しましたので、その一部を共有させていただきます。
なお、今回は彼女の会社(Global WorkplaceAnalytics)とOwl Labsの共同調査です。 アンケート参加者は社員10人以上の企業に勤務する約2,000人の米国内の正社員でした。
75% WFHでの生産性はオフィス勤務と同等、またはそれ以上になったと考えている
79% ウエブ会議の方がリアル会議より生産的と考えている
*USJPのクライアントの日系企業から耳にするコメントと重なります。 ただし、システムが整備されていない企業、業務が属人的な企業からは正反対のコメントを聞きます。
43% WFHではスキル取得が困難と考えている
*社歴の短い社員が多い(平均年齢の低い)企業からよく聞くコメントです。 逆にこの問題を認識していない企業はベテラン社員が揃っていて、これからの人材育成が課題なのかもしれません。
81%がCOVID収束後も自分の雇用主はWFHの選択肢を提供すると思っている
しかし、自分の雇用主がCOVID収束後にWFHの選択肢を廃止したら(複数回答)
66% 仕事を続けるが満足度が下がる
46% 新しい仕事を探す
44% 昇給を期待する
*社員にとって一度得た自由を失うことには抵抗があるでしょう。 勤務形態は業種や職種ごとに、どんどん変遷していくと思います。 優秀な社員を惹きつけるためには、競合他社の動向を把握しながら、勤務制度を最適化することが、今まで以上に重要になるでしょう。
その一方で
WFMによって通勤時間が一日平均40分節約できた
44% ウエブ会議のためのドレスアップ(服装、整髪、化粧等)は不要と考えている
コロナ禍が始まってから毎月$479を節約している
23% WFHの代償として10%以上の給料カットを受け入れる準備がある
26% WFHの代償として10%未満の給料カットを受け入れる準備がある
*通勤圏が広く、交通混雑の多い、南カリフォルニアではWFHによる通勤時間の短縮も必要経費の節約額も上記以上だと考えられます。
80% 週に1日はミーティングのない日を設けるべきと考えている
74% コアタイム(勤務が義務付けられる時間帯)を設けるべきと考えている
*WFHにすることで拘束時間というコンセプトが薄くなっているのかもしれません。 学校に行けない子供がいる人をはじめとして、平日の昼間でも自由になる時間を要求する人が増えているのでしょう。
50% フルタイム、または、ほぼフルタイムでWFHができるなら別の場所に引っ越す
物価の低い地域に引っ越す社員の給与を会社が調整(減額)することは
7% 公平
22% やや公平
31% やや不公平
40% 不公平
*アメリカ企業は技能や貢献に応じて報酬を設定することが基本ですが、全国各地に拠点がある企業は、勤務地の物価レベルに応じて報酬額を調整します。 このため転勤により、報酬額が上下することは一般的です。 しかしWFHを標準とする企業は、社員に居住地を選択する自由があるので、雇用主が社員の居住地に合わせて報酬を調整をすることは不要なはずです。 長期的には全世界レベルで職種ごとの報酬の相場が形成され、社員は自分の都合で住む場所を決めるようになるでしょう。 どのようなスピードで、この報酬の世界平準化が実現するかはわかりませんが、ニューヨークやサンフランシスコなどでは、すでにアパートの家賃が2-3割下がっていると報道されています。
将来のオフィスや雇用の在り方が、業種や職種によって大きく変わると思います。 また、都市の意味合いも変わっていくと思います。 10年後、20年後の社会を予測することはできませんが、自社の施設を取得する場合は、色々なケースを想定してから判断することが重要になると思います。