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(14) ESG経営について

 ESGはEnvironmental、Social、Governanceの頭文字をとったもので、企業が果たすべき環境保護、社会的責任、統治システムを指します。日本ではしばらく前にCSR(企業の社会的責任)という言葉をよく聞きました。CSRは、どちらかというと企業に対して社会倫理的行動の重要性を訴えるものでしたが、ESGは、投資家の立場から、企業の継続性と収益性に対して新しい評価の観点を投じるものです。日本では、政府の年金積立独立法人(GPIF)が2017年からESG指標を投資の判断基準にしています。    

 ESGは、企業の長期的な収益性と、環境問題や社会的問題への対応、企業経営の透明性や責任の明確化、などが必然的に結びついているという考えから来ています。例えば、幹部社員における女性参加率や外国人率を高めることは、多様性を高め、より柔軟で強靭な企業経営につながると考えられます。また環境に配慮したサプライチェーンは長期的リスクの軽減に役立つでしょう。    

 年金ファンドやトラストのような長期的な視点を持つ株主が最初にESGに関心を示しました。企業側にとっても、長期的な指針に基づいた経営を行うためには、安定した株主が必要です。ESG指標を使うことで両者の関心を一致させることができます。しかし従来からある財務指標と違い、ESGはまだ発展途上であることに注意が必要です。企業の独自工夫や発信力に任されている部分が大きいとも言えます。    

 ESGに似た言葉でSDGsがあります。これは国連が提唱している「持続可能な発展のための17のゴール」を指しています。SDGsが経営へのインプットであれば、ESGはそれを実現するための手段と考えることができます。「三方良し」や「道徳経済合一説」のように、日本企業は伝統的に社会貢献を志向している、という見方がありますが、投資家への説明力が圧倒的に足りないと思います。企業トップの強いリーダーシップによるIR(投資家リレーションシップ)強化が望まれています。  

 海外現地法人にとっても、 ESGはビジネスを広げる上でプラスになると思われます。持続可能性を考えた経営方針は、現地従業員の採用におけるアピールポイントになりますし、顧客獲得において差別化要因になる場合もあるでしょう。