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(12) 次世代の期待に応える

 資本主義によってみんなが豊かになりそれなりに平等な社会が実現する、という信念はアメリカではベビーブーマー、日本では昭和の高度経済成長に生きた世代にしか共有されていません。 今では格差が深刻な社会問題になっています。東大生の家庭の半数は年収950万円以上と言われていますし、アメリカのエリート私学であるイェール大学の学生の家庭の中間値収入は20万ドルだそうです。 世代を超えて格差が固定化しつつあると危惧されています。 

 今のようなグローバル化が進む前は、才能ある人たちはその能力を国や地域に還元することで社会に貢献してきました。 今は才能は地域に残らず、都会やグローバル組織に集中する傾向があり、地域や中小企業は取り残されつつあります。 さらに弁護士や財務アドバイザーのような社会的強者は、価値を生み出すことよりも、M&Aやバイアウトを通じて価値を「シフトする」ことで、高額な報酬を得ているという批判があります。 

 このような資本主義の行き過ぎに対する批判は、若い世代を中心に高まっています。 テロなどの社会不安と温暖化などの環境問題の時代に育ったミレニアル(1981年-1995年に生まれた世代)と Gen-Z(ジェネレーションZ - 1996年以降に生まれた世代)は政府に富の再分配を期待する傾向があります。企業に対しても社会的使命を果たすことを重視しています。給与は就職先選びにおける大きな要素ですが、Gen-Zは他世代ほど給与を重視しないそうです。 

 こうした次世代の期待は、これからの企業の人材戦略を考える上で見逃せない要素です。多くの場合、日系企業の現地法人は競合他社に比べて給与が低く、その代わりに雇用の安定をアピールしてきました。それに加えて持続可能性や社会貢献を訴えることは人材確保に有効だと思います。米国人から見て顔の見えにくい親会社のビジョンやミッションを解きほぐし、若い世代に伝えることは、これまで以上に重要になっているのではないでしょうか。