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(11) 経験を売るということ

 しばらく前に「プライスレス」を訴えるクレジットカードのCMがありました。モノを買うのではなく、値段のつけられない経験を買いましょう、というささやきです。身近なスターバックスもマクドナルドも、プロダクトではなく経験を売っていると言えます。 スターバックスは「センスのいいカフェでくつろぐ私」を、マクドナルドは「いつでもどこでも変わらない安心」を売っています。 経験はモノとは異なり、自分の一部になります。 そうなると簡単に離れられなくなります。 

 マーケティングの世界では、消費者はAISAS (Attention, Interest, Search, Action, Shareを意味する株式会社電通の登録商標) と呼ばれるステップを通じて購買を行うと言われています。 現代のマーケティングは、そのすべてのステップで一貫した経験を作ることを狙っています。 しかもそれをオンライン、オフラインを含めたすべての顧客接点(オムニチャネル)で展開します。 

 この傾向は企業間取引(B2B)にも浸透しています。 企業の購買担当者も消費者化していると言われています。 すなわち、豊富な選択を求める、他人のレビューを気にする、営業員が注文を取りに来るのを待つのではなく、自分で探しに行きショッピング感覚でオーダーする、納期を確認し、過去の購買履歴を閲覧できるようなセルフサービス機能を期待する、などの傾向があります。 売り手にはそうした期待値を理解し、魅力的な購買経験を提供することが求められます。 

 顧客経験、従業員経験などがビジネスの世界で重視されているのは、こうしたトレンドが背景にあります。 価値の創出は、いつも「満たされていないニーズ」の掘り起こしから始まります。 先進的な企業では、新商品開発やマーケティング計画策定に、民俗学者や心理学者が活用さているそうです。 モノ作りの企業が陥りがちな「プロダクトアウト」の発想から抜け出すためにも面白いやり方だと思います。