(1) 移民と経済発展
Covid-19の影響を受けて、アメリカの大学では秋学期はオンラインに移行するところが多いようです。その結果海外からの留学生が減少し、留学生の多い有名大学では経済的インパクトが懸念されています。2019年の数字ですが、海外からのアメリカに留学している大学生の内訳では、中国が最大で約37万人、インドが約20万人、その後に韓国の約5万人が続いています。中国・インド・韓国の経済発展にはこれら留学生の力が寄与していると思います。日本からの留学生は1万8000人で、台湾(2万3000人、総人口は日本の5分の1以下)より小さい数字なのは残念です。
「高等教育はアメリカ最大の輸出産業」と言われます。留学生は学費や生活費を落とすだけではなく、アメリカの文化や社会に触れて、帰国後も知米派・親米派になる可能性がありますし、将来的にアメリカで仕事につけば消費者・納税者として、経済成長と社会保障システムに大きな貢献をします。アメリカのオリンピックチームやノーベル賞受賞者には移民がしばしば登場し、移民に向けたアピールになっています。
コロナ禍以前、筆者はインドのシリコンバレーと呼ばれるバンガロールを何回か訪問したことがあります。ハイテク産業の本社やR&D拠点として有名です。高地にあり貴族や高官の避暑地として栄えた、インドでは比較的住みやすい場所ですが、大気汚染と交通の混雑と騒音はインドの他の都市と変わらないレベルです。そこで会ったエンジニアは全員アメリカでの留学経験があり、また多くは子どもをアメリカに留学させることを希望していました。
テレワークが進めば、住んでいる場所に関わらず、同じ成果に対する報酬はある範囲に収束すると思われます。外国人はあえてアメリカに移住しなくてもアメリカ人と同等の報酬を受け取るのが当たり前になります。しかし住環境、安全、子どもの教育、文化資産などの違いが歴然として存在する限り、アメリカの住むことの優位性はなくならないのではないかと考えます。その点でいつも頭に浮かぶのが日本です。風光明媚で安全な日本はシリコンバレーと同じように世界から移民を呼び寄せる魅力があると思うのです。そのポテンシャルをもっと活かせる日が来ることを期待しています。