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(17) 対話型AIがビジネスに与えるインパクト

米国のOpenAIが発表したChatGPTに続き、GoogleのBARDやマイクロソフトの新しいBingChatなど、あたかも人間のように文章を作成したり人間と対話(チャット)をするAIツールが登場しています。Metaやアップル、アマゾン、中国のテック企業などもこれに続くと考えられます。 

対話型AIのビジネスにおける利用方法に関しては、コールセンターのような顧客対応や、対話型セールス、採用・トレーニング・福利厚生のような人事、市場分析、翻訳、文書作成やプログラマーの生産性向上、などが議論されています。今から5年から10年以内に、リモートでできる仕事のほとんどはAIで置換されると予想する人もいるようです。 

対話型AIは製造業にも無縁ではありません。例えばOpenAIはマルチモーダルといって、画像情報と言語情報を一元的に利用可能にすることを計画中です。これを使えば、例えば工場の組立工程の動画をもとに、改善提案を言語で出力することが可能になります。さらにIoTデバイスとも組み合わせれば、工場設備全体の稼働状況に関する人間の質問に答えたり、人間の言葉による命令に従って工程を変えたりすることが可能になるかも知れません。  

しかしこのようなAIをビジネスに活かすことは簡単ではなさそうです。今のAIはまだ人間のように自分で考えて行動する知性を持っていません。企業は自分の業務に合わせてAIを訓練するために信頼性の高いデータを大量に用意し、業務知識を持った人間がAIを評価し、運用を監視する仕組みを構築する必要があります。今の大規模言語モデル(Large Language Model)と呼ばれるAIのアルゴリズムは開発者にとってもブラックボックスとなっており、ビジネスで使う場合には事前に十分に検証をすることが必要です。また場合によっては社外のデータを利用することの合意取り付け、社内の他の情報システムとの連携やサイバーセキュリティの強化なども必要です。こうしたことには、業務の継続的改善や新入社員に仕事を教えるのとは全く異なるスキルが会社側に求められます。すぐに対応できる企業は少ないかも知れません。 

また現在のAIツールには人間の常識が欠けていることに特に注意が必要です。目的を持ち真実を追求するような人間であれば当然と思われるふるまいを期待できないこと、その能力がよくも悪くも人間には想像がつかなく暴走する可能性、さらにデータの流出や悪用(ハッキング)されるなどのリスクがあります。自然言語を巧みに操るAIに欺かれないために、人間側もより進化する必要がありそうです。