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(22) AIを活用するために経営者が知っておくべきこと

今やメディアでAIという言葉を見ない日はないと言えるほどに、AIに対する関心が高まっています。AIをゲームチェンジャーと捉えている企業もあれば、まだそのインパクトを計りかねている企業もあると思います。そもそもAI活用が今までの情報経営やデータドリブンといった経営手法と何が違うのか、新しいバズワードの一つではないかと懐疑的に思っている経営者や現場のマネージャーがいるかも知れません。 

こうした背景には、AIという言葉の多義性があります。AIと一緒に出てくる、機械学習、ディープラーニング、大規模言語モデル(LLM)、生成AI、画像認識、ベイズ統計、データサイエンス、などの言葉も研究者以外が使うようになったのはここ数年の出来事です。混乱が発生するのも当たり前と言えるでしょう。社内にAIプロジェクトを立ち上げたら、それらの整理と社員教育が最初のステップになります。 

一方で、CEOやCIOにはAIの持つ新しさを理解し、プロジェクトチームが活躍できる場を作ることが求められます。AIは従来のERPやCRMといった社内情報システムと何が違うのでしょうか。以下簡単に解説します。

1.AIは非構造化データを扱うことができる

AIは高度なエクセルと何が違うのか、という質問に対する答がこれになります。またこれはAIがERPやCRMとも違う点です。エクセルは行と列で定義されたセルの中にある数値を扱います。まだ定義できていない情報、バイナリー(動画など)、大量データ、言語などを扱うことは普通はできません。別な言い方をすれば、エクセルやERPはすでに企業に取り込まれたデータを扱いますが、AIは取り込まれる以前のデータを探究することができます。

 2.AIはオープンである

最新のAI技術は開発者とユーザーのコミュニティを中心に発展してきました。主要なプログラミング言語であるPythonやRやそのツール(ライブラリー)はオープンソースです。誰でも無料で使え貢献できることがイノベーションを生み出しています。またクラウドを通じて公開されるデータ(各種統計や人工衛星データなど)が飛躍的に増大してAIが利用できるようになっています。またSNSのような非公開データであってもAPIを使って有料で入手することができます。

 3.AIは発見型である

ERPやCRMは既存の業務をより効率的に遂行するために使われますが、AIは企業の内外のデータを使い、仮説検証を通じて新たな知見を得る手助けをします。AIと一緒にデータサイエンスという言葉が使われる理由です。

 以上を通じて何が言えるでしょうか。AIを活用するには、既存の仕組みにとらわれず、社外かつグローバルに開かれたマインドセットを持つことが必要になると思います。それはCEOにとっては企業文化の刷新や顧客経験(カスタマーエクスペリエンス)の刷新、CIOにとってはレガシーシステムのクラウド化、情報システム部門の世代交代、ベンダーロックインからの解放、などを意味するかも知れません。米国にはこうした変革を進めている企業が多くあります。そして、それに成功している企業はAIの活用も進んでいるようです。AIをビジネスに使うためにはツールの学習と同時に経営者のリーダーシップが欠かせないと言えるでしょう。