(3) デジタルトランスフォーメーションの実践(オンラインコラボレーション編)
前回はデジタルマーケティングについて解説しました。今回ご紹介するのは、社内のオンラインコラボレーションです。コロナによって在宅勤務が普及しています。最初のうちはオフィスでやっていた業務(ミーティングなど)をどうやってオンラインに乗り換えるかが課題でしたが、先進的な企業では、リモートで働くことのメリット(集中できる、自由な時間に働けるなど)とデジタル技術の組み合わせを取り入れています。USJPはコロナが収束した後も、アメリカでは多くの企業でこうした働き方が定着すると考えています。
オンラインコラボレーションのツールとしてはSlackやMicrosoft Teamsといったものがあります。これらを使うと、e-mailの持つ課題(メール増大、宛先管理、トピック管理、添付ファイル管理、世代管理など)を減らすことができます。しかしオンラインツールの本来のメリットは、情報の整理ではなく生産性の向上です。従来の働き方ではたとえ全員がオフィスに出勤していても、社員が分断されて情報のすり合わせに時間がかかっていました。オンラインツールを活用すれば、仕事の全体像と進捗状況が全員に共有されます。新人であってもFAQや社内Wikiを参照することでいち早く業務に参加できるようになります。個人の作業の履歴が残り、出社しているか否かに変わらず貢献する人としない人の違いが見えるようになります。
こうしたツールの導入には、いくつかのベストプラクティスがあります。まず人々の行動変容を支援してもらえるように利用者部門のオピニオンリーダー層の支持を取り付けます。ツールの押し付けは利用者の反発を招き、DXを停滞させる危険をはらんでいるからです。また初期につまづかないように、利用する際のエチケットやポリシーをガイドライン化し教育します。稼働後も、常に利用者の利用意欲や習熟度をモニターし、必要に応じて使える機能を制限したりサポートを提供します。企業によっては、IT能力や学習意欲の高い新人社員を採用して意図的に社風を変えることが必要になる場合もあるでしょう。
ツールの導入と同時に、各人が非同期に仕事を進められるように作業の分担やチェックポイントの変更など業務プロセスの再設計をします。オンラインコラボレーションもデジタルマーケティングと同様に最初から正解を狙う必要はありません。小さく始めて試行錯誤を繰り返して自社にあった方法を作っていくアプローチをおすすめします。