(2) デジタルトランスフォーメーションの実践(デジタルマーケティング編)
前回は「なぜ今デジタルトランスフォーメーションなのか」について解説しました。今回からは具体的な実践のアイデアをご紹介します。
今、多くの企業がテコ入れを図っているのがデジタルマーケティングです。日本でマーケティングというと消費者を相手にするB2C企業のもの、というイメージが強いかも知れませんが、本来マーケティングは全てのビジネスに不可欠な活動です。マーケティング戦略を見直すことは、本来の顧客は誰なのか、ブランドイメージ、付加価値の源泉、企業の社会的役割、などを再確認したりブラッシュアップすることにつながります。
コロナ禍によってマーケティングにおけるサイバー空間の重要性が飛躍的に増大しています。以前であれば店舗での展示や印刷されたカタログ、商談会などがマーケティングの場でしたが、それらがインターネット上に移っています。欧米では見本市がバーチャル化し、個人的なリレーション構築は難しくなった反面、商談の場は24時間365日に広がっています。
さらに顧客・バイヤーもデジタルネイティブ層に世代交代をし、デジタルへの抵抗感が薄れています。日本は世界の最長寿国ですが、日本人購買層を念頭にデジタルマーケティングを考えると世界の市場にフィットしないリスクがあります。例えば中国におけるキャッシュレスは日本よりはるかに進んでいて、購買履歴をもとにきめ細かいマーケティング施策を実施することができます。国境のないサイバー空間でいかに多くの潜在顧客にリーチし差別化できるかが、今後の企業の死活問題になってくるでしょう。
デジタルマーケティングの構成要素としては以下のようなものがあります。
■ 検索エンジンのリスティング広告、第三者サイトへの広告
■ ソーシャルメディア広告(フェイスブック、インスタグラム、リンクトインなど)
■ 自社ウェブサイトを通じたブランディング
■ e-mailなどによるプッシュ型情報発信
■ 顧客とのコミュニケーション、チャット、webinarなど
■ オンライン販売
■ 上記全てを組み合わせたキャンペーン
新聞やテレビのようなマスメディアはスペースに限りがあり、それを牛耳る広告代理店が広告の企画から実行までを請け負っています。全国メディアへの広告は高額でありながら投資対効果の測定も困難です。それに対し、デジタルマーケティングではターゲットを絞った情報発信と応答分析ができます。コンテンツ作成や広告管理ツールが提供され、誰もが気軽に広告を始めることができます。これは規模の小さい企業にとって市場を広げる大きなチャンスです。
一方で広告を購買行動につなげ顧客のロイヤリティを確保するには、サイバー空間におけるデジタルツールの連携が必要です。一例を上げれば、検索エンジンに連動した広告をクリックした潜在ユーザーは特定の関心を持っています。しかしクリックした先が一般的な会社紹介のウェブサイトだったら、あるいは情報提供が既存のカタログのPDFファイルであったら利用者は時間をかけて商品情報を見つけてくれるでしょうか。異なるチャネルから誘導された相手に合わせてコンテンツを用意することが必要です。デジタルツールにおけるブランドの統一も重要です。ローカライズする部分とグローバルで統一するメッセージやロゴなどを定義し、いろいろなデジタルツール上で一貫して顧客の目に触れるようにします。
B2Bにおいても、買い手の情報の入手先が売り手の営業担当者からデジタルメディアにシフトする傾向が加速しています。買い手は製品の機能や価格に加え、ブランドイメージや情報の入手しやすさで購入を判断するようになっています。売り手は特定の地域で特定の興味を持つ潜在顧客に合わせて情報を提供できるようになっています。海外展開をしている日本企業は、日本本社の感覚で判断せずにローカルの声を十分に聞いてマーケティングコンテンツを準備することが必要です。