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(10) DX事例紹介 3 - GE Appliances

今回はGE アプライアンス(白物家電)を取り上げます。 

世界最大のコングロマリットであるGeneral Electric (GE)は、IoTやIndustry4.0のトレンドにのり、早くからDXに取り組んでいます。具体的には2015年にサンノゼ近郊のサン・ラーモンに本社を置くGEDigitalを設立し、産業のOSとして自社開発のPredixを基軸にしたIoTソリューションを売るビジネスを立ち上げました。 

GEが経営資源をデジタルを活用した電力や航空機エンジン事業のスマート化に集中する一方で、長い伝統を持ちアメリカ人にとってはアイコン的存在であった家電事業は中国のハイアールに2016年に54億ドルで売却されました。 

家電はコモディティ化し、コストで優位な中国系メーカーに勝てないと言うのがアメリカ人(日本人も?)の一般的な見方かも知れません。しかしGE アプライアンスはアメリカ子会社ならではの取り組みをしています。それはFirstBuildという組織です。 

ハイアールへの売却以前に、ソフトウェア開発やスタートアップの仕組みを製造業に活かそうという機運がありました。3Dプリンティングが普及したことで、プロトタイプを廉価に速く作り、早期に顧客のフィードバックをもらうことが可能になりました。またオープンソースやデザイン思考、アジャイル開発などの考え方を取り入れ、マイクロファクトリーでマスカスタマイズされた製品を作ることも可能になりました。 

FirstBuildはそういった流れに乗って、GE アプライアンス本社のあるケンタッキー州ルイビルに2014年にco-creation スペースとして設立されました。 

GEアプライアンスはFirstBuildを通じて、マイクロファクトリーの機材とGE製品を社外の開発者に提供します。FirstBuildには斬新なアイデアを持つ人や新しい技術シーズを持つ人たちがオンサイトまたはオンラインで集まり、時にはGE製品をハックしながら新しい製品の企画を作ります。参加者にはその貢献度に応じて、将来の製品の売上からロイヤリティが支払われる仕組みです。FirstBuildの拠点は今では上海とインドのハイデラバードにも展開されています。 

昨年末には、35年振りにGEブランドの小型家電が発表されて話題になりました。その中にはルイビルのFirstBuildで開発されたGEブランドのトースターとコーヒーメーカーが含まれています。 

家電のような成熟した業界であっても、消費者や社外エンジニアの知見を取り組むことでイノベーションを起こすことができるかも知れません。従来の製品開発は社内の企画部門やR&D部門がリードし、顧客からのインプットは限られたインタビューや販売チャネルを通じたフィードバックでした。オンラインコミュニティを作ることで消費者が直接製品開発に関与することができます。こうした発想の転換もDXの一部と言えるでしょう。