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VUCA時代の企業経営

(5) 成長する組織づくり(対立軸 現在 vs 将来、中央 vs 周縁、探索 vs 開発)

先行きが不透明な VUCA 時代に生き延びるためには組織の継続的な自己変革が必要です。そのために考え方のフレーム(枠)と多元的な世界観を持つことが役に立ちます。

成長する組織づくり(対立軸 現在 vs 将来、中央 vs 周縁、探索 vs 開発)

COO は今日の飯の種を作り、CEO は明日の飯の種を作ると言われます。アメリカのように成長が続く環境において CEO の役割は特に重要です。CEO は次の成長戦略に沿って新たなゴールを設定し施策を実行します。これは繰り返すプロセスで終わりがありません。

この終わりのなさは、成長することに伴う一種のパラドックスのように思えます。ビジネスには型が必要ですが、一度できた型は制約条件になる危険をはらんでいます。日本の武道には「守破離」という言葉があります。入門者は最初に師匠から型を学びそれをマスターする。然る後にそれを破り、新しい型を作ることを求められます。

どうやったら型を破ることができるでしょうか。よく言われるのは次のようなことです。

■ 周縁と重なりに注目する

■ 多様な経験や経歴を持った人(新人も含む)の意見を取り入れる

■ 探索と開発を並行して行う

文化的なイノベーションは中央から離れた周縁で始まると言われます。周縁では中央勢力の影響力が弱まっていて、オーソドックスではないアイデアが生き延びる余地があります。同時に周縁は他の勢力との接点でもあります。ビジネスで言えば、今の優良顧客ではない顧客層、主力製品ではない製品群などに満たされていないニーズがないかを探ったり、サプライチェーンの上下流の企業や全くの異業種との交流に投資します。

型には必ずバイアスが存在します。型を知らない新人や外部の人たちの意見を聞くことで、見えないバイアスに気がつくことができます。ある会社では会議では若手や新人を先に発言させるそうです。最初にシニアマネジメントが発言すると、議論の内容に一定の枠がはまってしまい、新しい発想が話しにくくなる、というのが理由です。

最後の探索 vs 開発について少し解説します。最近の研究によれば、子供(幼児)の脳はニューロンの新しい結びつきを作る動きが盛んなのに対して、大人の脳は一度できた結びつきを太くする傾向があります。また子供は探索や発見をすることに興味を示すのに対し、大人はすでに発見したことを改善することが得意です。人類は他の動物に比べて非常に長い子供時代を持っていますが、それが生き残りに有利に働いたと考えられます。これはまた探索 exploration と開発 exploitation という二つのモードの使い分けの最適化として機械学習の分野でも研究されているテーマです。

ビジネスで言えば、これは冒頭の CEO と COO の役割の違いに当たるかも知れません。同じ人が同時に探索と開発をすることはできないので、人や組織ごとに違ったミッションと KPI を与えることで、新しい型を探す(探索)活動と型を精緻化する(開発)活動のバランスを図ります。「言うは易し行うは難し」のアイデアに聞こえるかも知れませんが、VUCA 時代には今まで以上に多くのリソースを探索的な活動に投入することが必要になると思います。そのバランスを探るためのヒントになるのではないでしょうか。