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VUCA時代の企業経営

(4) Gen-Zを惹きつける企業を目指す

前々回でとりあげたような日本企業の特徴は、組織への帰属意識による助け合い、困難な時のがまんづよさ、仕事において理想(道)を極めようとする態度、品質へのこだわり、丁寧なフォロー、などのポジティブな効果を持っています。しかし、同時に丁寧さは完璧主義を生んで、時宜に適した割り切った考え方ができない、プロセスが定義されておらずノウハウが属人化する、などの弊害も指摘されています。 

一方で、50年前にドラッカーが個人主義が強く機能不全と見ていたアメリカ企業ですが、成長への野心、強いリーダーシップ、トップダウンによるスピード経営、専門家による科学的な意思決定、などの強みを持っていると思います。こうした特徴を取り入れたいと考える日本の経営者も多いと思います。 

日米ともに経営環境は変化しています。グローバル化が進み、先進国には共通したトレンドが見られます。その一つがGen-Zと呼ばれる若手世代(1995年−2010年生まれ)の台頭です。Gen-Zは不景気の時代に育ち、環境危機を自分たちの問題として捉えています。仕事に対しては雇用の安定と社会貢献を求めています。こうした特徴は日本企業にとってはチャンスかも知れません。日本企業の持つ長期的な視点や雇用の安定は魅力的に映ると思うからです。 

もちろん世代を超えて共通するアメリカ的な価値観は存在します。例えばGen-Zが雇用の安定を好むと言っても、彼ら自身がムダと思うような作業に多くの時間を費やしていたら、向上心のある人は離れてしまうでしょう。また成長よりも予算の着実な実行を重視するような企業も、能力のある社員には好まれないでしょう。 

在米日系企業の経営者は、アメリカ的な価値観と日本的な経営システムの整合性を取ろうとしていると思います。VUCA時代では環境の変化に応じてより速く経営システムをアップデートすることが必要です。

そのために、経営システムを3つの軸で考えることを推奨します。 

1.      コミュニケーション&カルチャー

2.      報酬制度

3.      業務プロセスとITシステム

これらは互いにつながっていて、全体として整合性が取れていることが必要です。例えば、2の意図を従業員に理解してもらうためには1が必要ですし、2で従業員を評価するためには業績指標をタイムリーに集めるような3が必要になります。 

日系企業で特に課題に思われるのが1と3です。従業員は、親会社がどういうビジョンを持ち米国法人と従業員に何を望んでいるのか、自分たちはそれによってどういうメリットがあるのか、を聞きたがっています。これは状況に合わせてタイムリーなアップデートが必要です。例えば環境危機への対応は欧米の大企業では一番の経営マターになっています。これへの対応を単なるリップサービスにしてしまってはGen-Zは離れていってしまうでしょう。

3の業務プロセスとITシステムは一心同体です。米国企業は日本企業に比べてITへの投資が格段に高いです。これには使えるツールの豊富さやサポートの手厚さなどが理由にあります。日本の常識で現地法人のIT投資をしばらないことが、成長局面にあるアメリカでは特に重要だと思います。特にGen-Zはデジタルネイティブとも言われテクノロジー対して新たな感受性を持っています。彼らに魅力的に映るシステム環境の整備が、これからの人材の確保に必要になると思われます。