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VUCA時代の企業経営

(3) ポストコロナの人事戦略

前回は、典型的な日本型経営であるコンセンサス経営からの脱却について考えてみましたが、今回は、人事戦略のフレームワークについて考えてみます。

しばらく前にある研究機関が、AI とロボティクスの進歩によって今ある仕事の半分近くは今後 20 年以内になくなるだろう、という予測を発表しました。消滅する仕事、新しく生まれる仕事、それに必要なスキルとその習得の方法に関する議論が盛り上がっています。

AI やロボティクスなどによる仕事の機械化が進めば、人間には、機械には作れない価値を生むことが求められます。そのために個人はどのようなスキルを身につけるべきか。よく言われているのは、経理やエンジニアリングのような具体的な職能スキル(ハードスキル)とは別に次のような汎用的スキルです。これらはソフトスキルと呼べるかも知れません。

■ データ収集・分析・計画策定・コミュニケーション・柔軟性などの問題解決能力

■ リーダーシップ、エンパシー、チームワーク、メンタリングなどの対人能力

■ プログラミング、データサイエンス、サイバーセキュリティなどのデジタルリテラシー

■ パッション、創業者マインド、冒険心、倫理、情熱、自己啓発などの自発性・自律性

こうしたスキルには知識として学べる部分と、日々の行動変容によって身につく習性のような部分があります。当然一朝一夕に習得できるものではないので、継続的なトレーニングや自己啓発が必要になります。大きな企業であれば、社内でこれらのスキルに特化したトレーニングプログラムを作り、幹部候補生に参加を義務付けることもありますし、トレーニングを外注することもできるでしょう。また社員ごとに専属のアドバイザーを一定期間つける「コーチング」という手法があり、先進的な企業で採用されています。

パンデミックの影響として離職率の増加が懸念されています。リモートワークの結果、会社の近くに住まないといけないという物理的な制約が意味を持たなくなり、社員の転職に対する抵抗が薄れています。2021 年 1 月に行われたある調査によれば、グローバルで 41%の労働者(フルタイムまたは自営業者)が年内の離職を考えているとのことです。これは企業にとってはチャンスでありリスクでもあります。高スキルな人材を世界から調達できる可能性が増えた反面、自社の貴重な人材を失うリスクも増えています。

リモートワーク環境で社員を引き止めるには、今まで以上に社員と会社の関係構築と仕事への動機づけへの投資が必要になります。例えば、社員に細分化したタスク遂行を求めるのではなく、求める結果(アウトカム)を明確にして、具体的なやり方には自己裁量の部分を大きくする、少数のメンバーからなるチームを編成して互いに親近感を持ち助け合える環境を作る、などの工夫があります。

リモートワークの普及は社内と社外の境界を曖昧にしました。契約社員やアウトソーサーの利用は今まで以上に増加するでしょう。しかしそれらをうまく使うには社内にノウハウの蓄積が必要です。機械化のトレンドも考慮した上で将来必要になるケイパビリティとスキルを棚卸しし、インソース vs アウトソース毎の調達計画とトレーニングプログラムを作成することは今まで以上に重要になってきています。