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(27) Gen-Zに選ばれる企業になるために

今アメリカ企業は空前の人材不足に見舞われています。理由の一つはベビーブーマーの引退と少子化です。さらにデジタルのような新しいスキルの需要が高まっています。結果的にGen-Zと呼ばれるような若くてポテンシャルのある労働力の奪い合いが起こっています。働き手を惹きつけるのは報酬やキャリアパスや労働環境(リモート勤務など)もありますが、Gen-Zについてよく話題になるのは価値観の共有です。それにはDEI(多様性)のような企業カルチャーの面もありますし、企業の目的・使命のような経済指標では測るのが難しいものもあります。報酬で獲得した人材はさらに高い報酬を求めて転職するかもしれませんが、企業と価値観が一致する従業員はより長期間勤務する可能性が高いと考えられます。

アメリカには10年以上前から公益企業(BenefitCorporation)という法人格があります。これは非営利(Non-Profit)とは異なり、営利(ForProfit)であると同時に公的な貢献を目指すことを法的に約束する企業を指します。「公的」には社員、環境、コミュニティなど株主以外のステークホルダーが含まれます。具体的には会社の約款に利益追求以外のミッションを明記し役員にそれを実行する法的責任を持たせることで成立します。税務上の特典はありません。

紛らわしいですが、第三者の審査会社である  B Labから得られるB Corpという認証もあります。これは独自の審査基準をもとに公益性に対するコミットメントを審査するもので、製品にBマークを付けることができます。

法的に公益企業であると同時にB Corp認証も受けている企業に食品のKingArthur Flour やスポーツ用品のPatagoniaがあります。

公益企業の最大のアドバンテージは全従業員が社会貢献という共通の目標に向かって前向きに仕事をし、目標達成に近づけることでしょう。より経済的または経営的なアドバンテージとしては、従業員の定着度が高い、投資家を引き付ける上で差別化になる、チームワークやイノベーションが促進される、危機を乗り越える力が強い、などが指摘されています。またコロナパンデミックでも公益をうたう企業の倒産率は相対的に低かったという調査結果もあります。

公益法人化は消費者向け企業だけではなく、テクノロジー企業やスタートアップにも広がっています。社会問題に関心の高いGen-Zはテクノロジー企業にとっては従業員や取引先でもあり重要な顧客です。企業幹部のうたうCSRやSDGがリップサービスかどうかは従業員が一番よく分かります。公益法人化を目指さなくても、若手が求める価値観を理解し仕事を通じてその実現を図れるようにすることは人材獲得と定着に有効な打ち手ではないでしょうか。