(26) アメリカのライドシェアとロボタクシーの現在地
ウェイモ:自動運転タクシーの先駆者
ウェイモは、グーグルの親会社であるアルファベットが筆頭株主のシリコンバレーの企業です。2009年にサンフランシスコの公道で自動運転の実証試験を開始して以来、ロボタクシーの技術開発をリードしてきました。2020年にはアリゾナ州フェニックスで有償のロボタクシーサービスを開始し、現在ではフェニックス周辺の300平方マイル以上の広範な地域、サンフランシスコ周辺の一部の地域、そしてロサンゼルス周辺の一部の地域で一般向けの有償ロボタクシーサービスを提供しています。
収益や運用車両数は公表されていませんが、3都市合計で約1000台の車両が運用されていると見られています。ロサンゼルスで使用されている車両は、ジャガー製の電気自動車を改造したもので、フェニックスではジャガーに加えてクライスラーのハイブリッドミニバンも使用されています。
ウェイモの車外には多数のカメラやライダーなどのセンサーが搭載され、車内にはコールセンターと通信可能なカメラやスピーカーが設置されています。運転席にはハンドルやアクセルが付いたままですが、普段は空席です。前席1名と後席3名の計4名が乗車可能で、運転席に座ることは許されていません。
アメリカのライドシェア・ロボタクシー業界
アメリカでロボタクシービジネスの基盤は、ウーバーに代表されるライドシェアによって作られました。一般消費者が携帯アプリを使ってウーバーを呼び、登録されたクレジットカードでオンライン支払をすることに慣れたため、同じ方法でロボタクシーを提供することが可能になったと思います。そこで、ライドシェアについて少し振り返ってみます。
2024年のアメリカのライドシェア市場規模は200億ドル以上、タクシーとリムジンの合計は430億ドルと推定されています。アメリカ人が一人あたり年間60ドルをライドシェアに費やす、または100万人のライドシェアドライバーが一人あたり運賃2万ドル分を運転をしている計算になります。
アメリカのライドシェア市場は、ウーバーとリフトの2社がほぼ独占しており、ウーバーが7割以上のシェアを持っています。両社のライドシェアのサービス内容や料金に大きな違いはありませんが、ウーバーはフードデリバリー、トラック運送、グローバル展開など、より積極的に新領域に挑戦し、業界トップの座を獲得したようです。
アメリカでは車が不可欠な交通手段であるためか、自動車所有、運転免許、車検、そしてライドシェアに関する要件や規制は日本よりはだいぶ緩やかになっています。
タクシーより待ち時間が短く料金も低いライドシェアが普及したことにより、運転の心配をせずに外での飲酒が容易になり、外食の習慣も変わりました。子供の学校の送り迎えにライドシェアを利用する親が増え、ウーバーやリフトが免責のために未成年者だけの利用を禁じたため、未成年者の利用に特化したライドシェア会社も登場しました。ウーバーが登場してからの10年強でビジネスモデルやテクノロジーに多くの進化が見られました。
ロサンゼルスなどの一部の大都市では、電動キックボードや電動自転車のシェアリングサービスもあります。ただ、利用者のマナー問題などにより、各社とも収益化には苦戦しているようです。
GMの子会社であるクルーズは、ウェイモの次にロボタクシーの商用運転を開始した業者ですが、サンフランシスコで緊急車両の邪魔になるなど、多くの問題を起こし、州当局からの営業許可を失いました。その結果、サンフランシスコ以外での商用運転も自主的に停止し、現在はサービス再開に向けて準備中です。ウーバーもかつてロボタクシーを開発していましたが、実証実験中に死亡事故を起こした後にロボタクシー事業をAurora社に売却しました。
その結果、アメリカでロボタクシーの営業運転を行っているのは、現時点ではウェイモだけです。Aurora社をはじめとする数社が、大型トレーラートラックの長距離自動運転の実証実験をテキサス州で行っており、数か月以内に商業運転を開始すると発表しています。