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(21) AIのビジネス利用に必要なスキルとは

AIは人間と同じように学習を通じて有用性を高めることができます。それを利用する人間もAIのより効果的な利用方法を学習していきます。したがってAIのビジネス利用においてはAIツール(アルゴリズム)と人材は一体として考える必要があります。また最近のAIは人間のように受け答えをするようになりましたが、現時点では、事実を追求することや倫理的な判断するなどの人間の常識を共有していません。AIの特性や限界を理解した人間が最終判断をする必要があります。 

AIをビジネスで利用するには通常次のような作業が必要です。それはデータ収集・クレンジング、AIモデルのデザイン・訓練、テスト、運用維持です。これらの作業を行うには全く新しいスキルが必要です。こうしたスキルの需要と重要性は将来に渡って飛躍的に増加すると考えられます。以上を考慮すると、まずは主要部署の社員からなる特命チームを立ち上げてノウハウの蓄積を開始することをお勧めします。外部委託の必要性やその内容はその後に決めるべきでしょう。

AI利用に必要なスキルは多岐に渡りますが、分かりやすいように先進的な企業におけるAIチームの役割分担をご紹介します。 

■ データサイエンティスト:データを元にビジネスに役立つ仮説を作り検証する

■ データエンジニア:AIに必要なデータを準備する

■ 機械学習エンジニア:AIモデルを設計し訓練する

■ ビジネスアナリスト:ビジネス要件を定義する

■ エシクス・リーガルリード:AIを利用する際の社会的・法的な問題に対処する

 

データサイエンティストという名称は見慣れないかも知れません。ここではサイエンティスト(科学者)はエンジニア(技術者)やアカデミシャン(学者)とは少し違った意味を持っています。サイエンティストはエンジニアと違い新しい知識をもたらすことをゴールにします。またアカデミシャンは知識発見自体が目的ですが、サイエンティストは実用性を追求します。したがって、データサイエンティストはデータに関する理論や実験を通じてビジネスに役立つ知見を探すことを使命としています。 

データサイエンティストの役割は、ヒト・モノ・カネに加えて情報(データ)が第4の経営資源と言われるようになってから注目されてきました。未知のデータの世界を探求して経営に役立てる点で期待が集まっています。 

データエンジニアはビジネスに役立つさまざまな情報を入手しAIで活用できるようにクレンジングや名寄せをします。最近ではソーシャルメディアなどの外部の情報を取り入れるノウハウも必要です。 

機械学習エンジニアはAIツールを自社の目的に合わせてカスタマイズする役割を果たします。最近は生成AIを生み出したDeep Learning が有名ですが、それ以外にも多くのツール(アルゴリズム)がオープンソースとして利用可能です。万能なアルゴリズムは存在しないので目的に合わせて使い分けることが必要です。

ビジネスアナリストはユーザー部門を代表して業務要件を定義します。AIの種類によっては業務プロセスが全く変わってしまったり不要になってしまう可能性があります。過去のやり方を踏襲するのではなく、どうやったら顧客価値を作れるかをもとに業務の根本的な見直しをする想像力が求められます。 

最後のエシクス・リーガルリードはデータとAIの利用における倫理・法務の面でのリスクを監視し問題発生時の対応を指揮します。AIの訓練に使われたデータの入手方法や利用方法に問題はないか、AIのアルゴリズムにバイアスがないか、AIの生成物が予期しない使われ方をしないか、AIに代替される従業員への対応、などについて最新の情報を収集しチームにアドバイスを行います。この分野はまだ新しく流動的ですが、企業のレピュテーションに深刻な影響を与え、AI利用を頓挫させる可能性があり特に注意が必要です。 

実際に必要となるAI要員やその獲得のタイミングは会社の規模やAIが事業に与えるインパクトにより異なります。まずは事業全体を見渡した上で大きなAI利用計画(ロードマップ)を作ることが一般的ですが、そもそもそれを描くための知見が十分ではない場合もありそうです。その場合は早めに外部の専門家の助けを借りることが、デジタル人材獲得競争に勝つ近道と言えるでしょう。